こうふの「はっこう」を訪ねて

「甲府のワインと酵母を知る日帰りバスツアー」レポート

訪ねた場所 :
山梨大学ワイン科学研究センター、かいてらす、こうふはっこうマルシェ2024、シャトー酒折ワイナリー

文:高山かおり 写真:平山亮、BEEK

「こうふはっこうマルシェ」において今年初めて開催された新宿発着のバスツアー。45名の参加者は、山梨大学ワイン科学研究センターやかいてらす、シャトー酒折で施設の見学とワインの試飲を堪能しながら、はっこうマルシェの会場へも足を運びました。当日の様子を多数の写真を交えながら紹介していきます。

日本唯一の果実酒専門の研究機関、
山梨大学ワイン科学研究センターへ

ツアー参加者は2台のバスに分かれ、朝7時30分に新宿を出発。ワイン好きのみなさんの熱気が溢れ、賑やかな道中でした。車内ではこれから向かう甲府市のDVD等を見て予習。また、YBSラジオのパーソナリティーでワインエキスパート資格を取得している塩澤未佳子さんと、甲斐市のキャンプ場「ノースランドキャンパーズビレッジ」に勤務するソムリエの植松勇太郎さんがそれぞれ案内役を務め、山梨に近づくと甲府がなぜワインづくりに適している土地なのかなどについて話しました。
当日は天気にも恵まれ、都内から雪化粧した富士山をはっきりと望めました。笹子トンネルを抜けると目の前に広がる甲府盆地と八ヶ岳連峰や南アルプスの山々も美しく、車窓からの景色を楽しみながらバスに約2時間半揺られ、まずは山梨大学ワイン科学研究センターに到着しました。

果実酒を専門に研究する国内唯一の研究機関である、山梨大学ワイン科学研究センター。1947年、山梨大学工学部の前身である山梨工業専門学校に附属発酵研究所と設置され、1950年に学制改革に伴い山梨大学工学部附属発酵化学研究施設と改称。2000年より発酵化学研究施設を廃止し、ワイン科学研究センターを新設しました。戦後から70年以上にわたり、ワインを中心に研究を続ける歴史ある機関です。ツアーでは、通常は一般の見学を受け付けていないセンター内を、特別にご案内いただきました。

研究のために学生がつくったワインが1947年のものからあるといわれている地下の貯蔵庫は、防空壕の跡地だったそう。ワインの濃厚な香りが漂う空間で西暦が書かれているプレートを見ながら、みなさんそれぞれご自身の生まれ年のワインを探しているようでした。

工場で醸造したワインの成分を分析しているという1階の分析室では、担当の方からお話を伺いました。室内には蒸留器具や、ワインの酸度や糖度を計る機械などが並びます。美味しいワインをつくるための発酵管理を一つのテーマにしながら研究を続けている、とのこと。質疑応答の時間では、参加者から様々な質問が飛び交いました。「酵母はどのように見つけてくるのか?」「ワイン酵母としての条件は?」「これまで採取できた酵母で意外なものは?」「酵母によって味わいはどう変わるのか?」「ワインの酵母とチーズの酵母の違いは?」など、ひとつひとつの質問に対して詳しく解説いただき、酵母に対しての知識を深めていきました。

その後、柳田藤寿教授による「甲府のワインと酵母を知る」と題した講演を聞きながら、ワインなどの試飲を行いました。醸造微生物学・微生物分類学を専門分野として研究する柳田教授。現在は発酵食品とワイン醸造の微生物学的研究をテーマとし、乳酸菌や酵母を使った発酵食品の研究を行っています。
「普段は1時間半で講義する」という発酵と酵母に関しての内容を、10分のスペシャルバージョンで非常にユニークな余談を交えながらお話いただきました。

またスペシャルゲストとして、ワインへの造詣が深くワインエキスパートの資格を取得しているEXILEのSHOKICHIさんを迎え、一緒にトークと試飲を楽しみました。SHOKICHIさんは、出身地である北海道でワイン醸造に携わった経験を持ち、現在は肉牛も飼育。ちょうどフランスのワイン生産者を訪ねて帰ってきたばかりということで、現地での話を交えながら、ご自身が考えるワインの魅力について語っていただきました。SHOKICHIさんは、山梨のワインの中では「甲州種」が特に好きとのことで、日本のどんな料理にも合わせやすいと絶賛していました。

当日テイスティングしたワインは、「甲府之証」認定商品のドメーヌQ「甲府スパークリングロゼパッション2023」、サドヤ「甲府甲州2023」、センター秘蔵酒2種です。
柳田教授からは、飲む際の香りの楽しみ方やグラスの選び方から回し方まで、ワインを楽しむための所作について細かくレクチャーいただき、熱心にメモを取る方も見受けられました。
SHOKICHIさんからは、4種類のワインを飲みながらそれぞれにどんな料理を合わせたいかなどをお話いただきました。前述の「甲州」については、「世界中のワインの中でも、透明に近いワインは珍しいんですよ。甲州には果実味の中に程よい苦味があり、アルコール度数の高さをそこまで感じさせないライトさがある。家でつくった唐揚げと合わせたいですね。ワインの酸が油を切る役割も担います」とのこと。また、「牡蠣の殻の中にブランデーを少し入れて食べるのもいいのでは?」など、意外性のある食べ方もご提案いただき、会場からは驚きの声が挙がっていました。

こうふはっこうマルシェ2024の会場へ

その後昼食会場のかいてらすへ移動。郷土料理のほうとうや鳥もつ煮などを味わい、1階の試飲コーナーで甲府市産や県産のワインを楽しみました。1階では、県内最大級の37社220本のワインのほか、県産の日本酒、一大産地である甲府のジュエリーや甲州印伝などの伝統工芸品、銘菓なども取り揃えているため、お買い物を楽しんでいる方も多くいらっしゃいました。

そして、こうふはっこうマルシェ2024の会場へ移動。約1時間の自由時間では、県内外からの出店者と多くの来場者がひしめく会場で、思い思いの時間を過ごしました。

 
 
 
 

会場では、YBSラジオで毎週日曜17:30〜17:45に放送の人気番組「発酵兄弟のCOZY TALK」の公開収録も行われ、柳田教授とSHOKICHIさんが登場。ワインについてのトークで盛り上がりました。

最後の訪問地、シャトー酒折ワイナリーへ

あっという間に最後の訪問地である、シャトー酒折ワイナリーへ。現在甲府市内には4つのワイナリーがあります。シャトー酒折ワイナリーは1991年に誕生したワイナリーです。グループ会社の海外メーカーとのネットワークにより、つねに海外のワイン製造技術に関する最新の情報を得ながら、甲州やマスカットベリーAなどの日本固有の葡萄品種を中心としたワイン醸造の他、梅酒やゆず酒などのリキュールも製造しています。

ぶどうを絞る機械などが並ぶ生産ラインをガラス越しに見学しながら、ワインづくりの工程についてワイナリーの方から解説を受けました。地下の熟成貯蔵庫では木樽と積み上がった瓶のワインが空間を埋め尽くすように並んでいました。樽にワインを入れるのはなぜなのか、ワインの性質を交えながら教えていただき、「ワインを飲む際には木樽の香りがあるかどうかにもぜひ注目してみてください」とアドバイスがありました。

試飲は、甲州ドライ 白、マスカットベリーA 樽熟成 赤、デラウェア 白、ぶどうジュースの4種類。
甲府市を一望できる高台で窓からの景色も堪能しながらワイングラスを傾ける、なんとも贅沢な空間でした。ソムリエの方へ質問をしながらワインについてさらに知識を深めたり、参加者同士で会話を弾ませながらワインを飲み交わしたりと、最後のひとときを楽しみながらゆったりと過ごしていた姿が印象的でした。

こうしてワインや酵母発酵に関するマニアックな話を聞きながら、甲府のワインの味わいも存分に楽しめた日帰りツアーが終了。
ご参加された方からは多くの感想をいただきましたが、中でも「山梨大学ワイン科学研究センターでの見学や解説が非常に貴重な体験だった」との声を多数頂戴しました。早くも来年の開催を望む声もいただき、満足度の高いツアーになったようです。柳田教授が開発に携わった食品とワインのお土産もつき、ご自宅に戻られてからも甲府のワインを堪能されたことでしょう。
ぜひ日本ワイン発祥の地である甲府で、またお会いしましょう!

山梨大学ワイン科学研究センター

山梨県甲府市北新1-13-1
http://www.wine.yamanashi.ac.jp/

かいてらす

山梨県甲府市東光寺3-13-25
https://kaiterasu.jp/

シャトー酒折ワイナリー

山梨県甲府市酒折町1338-203
https://www.sakaoriwine.com/