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こうふの「はっこう」を訪ねて

発酵ってなに?
~武田信玄もビックリ!地域活性化に繋がる発酵食品~

山梨大学 ワイン科学研究センター

柳田藤寿 教授

山梨大学の柳田藤寿教授はワインを中心とした酵母、乳酸菌研究のスペシャリスト。山梨の「発酵」にかかわる商品開発にも数多く携わった先生です。
そんな「発酵」の指南役である柳田先生に、「そもそも発酵食品って何?」という基本から、山梨の発酵食品の最新事情を教えていただきました。

柳田藤寿教授

農学博士。山梨大学ワイン科学研究センター教授。研究テーマは「発酵食品およびワイン醸造の微生物学的研究」。主な著書に『ワインと宝石』(山梨日日新聞社)、『乳酸菌の科学と技術』(学会出版センター)、『世界が認めた国産ワイン』(ぶんか社)など。

偶然できた発酵食品

世界で最初の発酵食品は、ぶどうジュースや牛乳の入った容器が発酵して偶然にできたワインやヨーグルトで、およそ7000~8000年前に生まれたといわれています。それから何千年もの間、世界各地や日本においてメカニズムが分からない発酵を利用していたと思われます。
今から約160年前にパスツールにより微生物の存在が明らかになると、さまざまな研究によって健康効果などが報告され、世界でも注目されて食されるようになりました。
私は、体に良い発酵食品の利用のため、県内各地の湖、川、水、雪などから有用な発酵微生物(酵母や乳酸菌など)を分離しワインや飲料をはじめ新たな発酵食品開発を行っています。いずれも、高品質かつ独自性のある新たな地域ブランド食品です。ここでは、発酵食品の基礎的な話から、開発予定も含め、地域活性化に繋がる発酵食品を紹介します。

発酵のメカニズム

発酵とは、酵母やカビ(麹菌)や細菌(乳酸菌、酢酸菌、納豆菌)などの微生物がエネルギーを得るために有機化合物を分解して、アルコール類・有機酸類・二酸化炭素などを生成していく過程です。それを利用して、お酒(日本酒、ビール、ワイン、焼酎、ウイスキー)・ヨーグルト・チーズ・パン、味噌・醤油・魚醤・酢・みりん・納豆・漬物(ぬか漬け、麹漬け)・塩辛(いかの塩辛、このわた)などの発酵食品製造などに古来より利用されてきました。

また腐敗は、発酵と同じ原理で起こりますが、人間にとって有益であれば「発酵」、人間にとって有害であれば「腐敗」になります。

発酵食品の種類
1.乳製品

ヨーグルト、乳酸菌飲料、チーズ、馬乳酒

2.アルコール飲料

清酒、ビール、ワイン、焼酎、ウイスキー

3.調味食品

醤油、味噌、お酢、魚醤油

4.食肉加工

ハム、ドライソーセージ

5.穀物の発酵

納豆、豆腐よう、臭豆腐、テンペ

6.魚介類の発酵

鰹節、塩辛、くさや、馴れ寿司

7.製パン

パン

8.漬物

糖味噌漬、キムチ、ピクルス、ザワークラウト

9.飼料

サイレージ

発酵食品について

「発酵とは」で挙げたように、日本の多様な発酵食品のひとつに日本酒があります。米と水を原料とし、麹菌を加えて米を糖化して、できたブドウ糖を清酒酵母が発酵してアルコールができます。これを濾したものが日本酒です。

また、調味料として有名なのが味噌と醤油です。味噌は、大豆に麹や塩を混ぜ合わせて発酵させ、大豆のたんぱく質をアミノ酸に分解しうまみが増えた調味料です。醤油は、大豆と小麦に麹を混ぜ発酵させます。麹菌や酵母菌や乳酸菌の発酵により、香りとうまみが増す調味料です。

発酵食品の持つ3つの力

1 食べ物がおいしくなる
微生物の力によって、食材の澱粉や糖、タンパク質を分解発酵させて独自のうまみ成分や風味をつくりあげます。また、微生物そのもののうまみもあります。これらがミックスされて独特のおいしさが生み出されます。

2 栄養価が高くて体に良い
薬がなかった時代には、発酵食品が体力をつけるために重宝されていたといわれています。昔の人にとってはいわゆる健康食品だったのかもしれません。発酵過程での酵素の働きにより、さまざまな栄養成分が生み出され、栄養価の高い食品に生まれ変わるからです。

3 食材の保存性が向上する
 冷蔵庫や冷凍庫がなかった時代には、食材を乾燥させたり塩蔵させたりして保存してきました。人間に有益な微生物がある一定以上に繁殖し、人間に有害となる腐敗菌を抑えて保存性を高める力を持っています。

発酵食品の効能

発酵食品には、健康効果があるといわれているものがたくさんあります。
・ヨーグルトや乳酸発酵飲料……整腸作用や骨粗しょう症の予防
・納豆……含まれるビタミンK2には、骨粗しょう症の予防、血液をさらさらにする作用
・赤ワイン……高い抗酸化作用、動脈硬化予防作用
これ以外の発酵食品にも多くの効能があり、生活習慣病の予防や健康維持に関与しているといわれています。

発酵食品のまとめ

長寿国の日本は、外国に比べて特有の食材が多いです。日本食は、動物性の脂肪が少なく、穀物、魚、野菜を多く使うのが特徴です。先人たちが生み出した「保存ができて、おいしい」発酵食品は、酵素や乳酸菌の働きを知って生み出された知恵の結晶です。この日本独特の伝統文化を大切にして、日本の発酵食品を味わうのはいかがでしょうか?

山梨発! あたらしい発酵食品

・甲府開府500年記念スパークリングワイン (甲府市)

「はっこうマルシェスペシャルBOX」で買える「信玄公生誕500年記念セット」にも入っている「甲府スパークリングワイン2020」は、私が甲府市と共同研究で開発したものです。
2019年は、武田信玄の父信虎が甲府に住んで500年の記念の年だったので、武田信玄が住んでいた武田神社のお堀の水などを採取し、研究室において発酵性酵母を403株分離。その中から優良な酵母を探索し選抜した発酵性酵母(AU14-22株)を用いて、甲府市産の甲州ブドウを使用したオール甲府市産の白の「甲府スパークリングワイン甲州」を開発しサドヤワイナリーから発売しました。

開府500年記念 甲府スパークリングワイン
開府500年記念 甲府スパークリングワイン

また、発酵性酵母(16TJAU-29-42株)を用いて、「甲府スパークリングワイン マスカット・ベーリーA アリカント」を発売。この甲府開府500年を記念して作られた赤白のスパークリングワインは瞬く間に完売しました。
そして2021年は、武田信玄生誕500年を記念して、エチケットラベルを一新して2月1日に発売いたしました。

信玄生誕500年記念 甲府スパークリングワイン
信玄生誕500年記念 甲府スパークリングワイン

・大豆で作った飲むヨーグルト(北杜市)

食品展示会で、北杜市の「白州屋まめ吉」の試作品を試したのが始まりでした。この時の印象は「酸っぱくて飲めない飲料」でしたが、これが共同研究のきっかけ。その後、以下の4つが重要な開発ポイントになりました。

・青臭さが少ない飲料用大豆「すずさやか」を使用
・「南アルプス天然水」で知られるミネラルウォーター生産日本一の北杜市「尾白川の水」で仕込む
・大豆を生のまま微粉砕して、仕込水に溶かし込む「大豆丸ごと製法」技術を採用することによって、おからの成分である食物繊維が豊富
・厳選された乳酸菌と山梨大学で開発された「山梨ワイン酵母W-3」で時間をかけて発酵することで大豆臭を少なくする

大豆で作った飲むヨーグルト(北杜市)

以上の工夫が功を奏し、2010年4月に飲みやすくておいしい「大豆で作った飲むヨーグルト」を発売することができました。2011年には桃果汁を、2013年にはぶどう果汁を加えて発酵させた「大豆で作った飲むヨーグルト」も開発販売しています。また、2020年には、生菌タイプの大豆ヨーグルトを発売しました。

・種も皮も使った食べるぶどうジュース

一般に果物や野菜を用いたジュースは、原料を絞った液体を用いてつくられます。筆者は、2016年に、ブドウを種も皮も実までまるごと使った「食べるぶどうジュース」という飲料を「山梨Made」と開発しました。

食べるブドウジュース

大量生産のラインでは使えない、手間ひまのかかるマスコロライダーという器械を使用して、原料の果物をミクロまで破砕するのがポイント。一般的なぶどうジュースではとれないビタミンEやオレイン酸やリノール酸が含まれています。また、種などに総プロアントシアニジンやレスベラトロールも多く含まれています。添加物を一切使用していないため、安全な商品にもなっています。2020年には、マスカット・ベーリーAでつくった食べるぶどうジュースに含まれるプロアントシアニジンに高血圧を下げる効果があるため、機能性表示食品に認定されました。ぜひ、一度飲んでいただきたい商品です。


発酵食品は、微生物などによってもともと偶然にできた産物といわれており、先人らのいろいろな工夫によって乳製品、酒類、調味料などに生まれ変わっています。近年の科学技術の発達によって微生物の存在や働きが次々に明らかとなってきました。その結果、健康効果などが報告され、世界でも注目され食されるようになりました。

このような発酵食品の利用を目的として、県内の自然環境から有用な発酵微生物を分離し、分離菌を用いて、高品質かつ独自性のある新たな地域ブランド食品の開発や研究開発を行っています。
『こうふはっこうマルシェ2021オンライン』において多くの発酵食品を購入することができますので、ぜひ購入して健康に良い発酵食品を食べましょう!!

SADOYA WINERY

〒400-0024 甲府市北口3-3-24
営業時間:10:00~15:00(コロナ禍特別営業)
定休日:※コロナ禍のため事前確認お願い致します
電話番号:055-251-3671
メールアドレス:info@sadoya.co.jp
※その他、見学(要予約)、レストランの営業時間などはHPを参照ください。
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白州屋まめ吉

〒408-0312 山梨県北杜市白州町台ケ原274-1
営業時間:9:00-17:00
定休日:土日祭日
電話番号:0551‐35‐3393
メールアドレス:info@h-mamekichi.co.jp
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山梨Made株式会社

〒400-0413 山梨県南アルプス市和泉984-1
営業時間:10:00~17:00
定休日:土日祝祭日
電話番号:055-225-5553
メールアドレス:info-yamanashimade@jit-c.co.jp
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